昭和26年、ストックホルム。
その冬、太陽が昇らないその街で、連続殺人事件が起きた。
終戦の荒々しさの中に忘れ去られたその事件は、人の記憶からもあっけなく忘れ去られた。
ただ一つ、ある言い伝えを残して—
「あの屋敷に植えられた大樹には、死んだ人の魂が還るそうだ。」
それから37年後、バブル景気絶頂の東京。
太陽が沈まない街で、世間を賑わせた株式ブローカー達がいた。
ものの数秒で巨万の富を得る彼が次に狙いを付けたのは、遠い北欧であの事件に巻き込まれた一族の忘れ形見だった。
極夜と白夜に挟まれたあの事件は、まだ終わっていなかったのだ。
少年は全てを知っていた。
全てを知ってその上で、この事件を追い掛けた。
それが、この長い物語の始まりだった。