「正直に言おう、もうたいして興味がないんだ。」
こんなに凪いでいる時も珍しい、というほど穏やかだった。
しばらくそのコップの中の嵐を眺めた後、嵐は次第に収まって、夜がきた。
それから暫くの間、海は鳴かなかった。
海を知らなかった男は、海の絵を描こうと思った、
が、男は本物の海を知らなかったので、白い磁器のカップの絵を描いた。
こんな日はもう来ないのではないか、と思うほどその日は暖かかった。
庭に広げた洗濯物は、朝食の前にはしっかり乾いていた。そして朝がきた。
それから暫くの間、雨は降らなかった。
陽の光を知らなかった女は、太陽と話をしようとした、
が、女は本当の太陽を知らなかったので、庭に咲いている向日葵と話をした。
そこに住む人たちは皆、本当の海も本当の太陽も知らなかったのだけれど、
嵐はコップの中で起こるものだったし、
向日葵の向いている方向に太陽が出ていることは知っていたので、
特段そんなに困ることはなかった。
そういったものを自分たちが知らない、ことも知っていたし、
その知らないことすら知らない連中に比べたら、
自分たちは幾分かましだと思っていたから、
自分たちの知っていることに疑いを向けることも少なかった。
みんながそれでよかったんだと気づいたときには、
誰もカップの海を書くこともなかったし、向日葵は黙ったままだった。
今回のカムヰヤッセンは、そんな話になりそうです。
キャスト
甘粕阿紗子/小島明之/北川大輔/安藤理樹(PLAT-formance)/伊比井香織/今城文恵(浮世企画)/大西智子(あなざーわーくす)/岡山誠(ブルドッキングヘッドロック)/尾倉ケント(アイサツ)/小玉久仁子(ホチキス)/齋藤陽介/辻貴大/西岡未央(悪い芝居)/埜本幸良(範宙遊泳)/森田祐吏(北京蝶々)/山脇唯(ヨーロッパ企画)
スタッフ
作・演出:北川大輔
舞台監督:杣谷昌洋/舞台監督補:川崎裕太(Theatre MERCURY)/舞台美術:大泉七奈子/照明:吉村愛子(Fantasista?ish.)/音響:笠木健司(クロムモリブデン)/音楽:吉田能(PLAT-formance)/宣伝美術 デザイン:釣巻デザイン室/宣伝美術 アートワーク:平山正太郎/プリンティングディレクション:青山功(リトルウイング)/スチール:原絵里子/衣装:飯田裕幸/映像:新谷純(クロムモリブデン)/演出助手:裕本恭(東京ペンギン)・大原渉平(劇団しようよ)・菊地一輝
制作:〔東京〕塩田友克・〔京都〕有田小乃美(悪い芝居)
プロデューサー:工藤喬才
提携:公益財団法人 武蔵野文化事業団(東京公演)
共催:京都芸術センター(京都公演)
主催・企画・製作:カムヰヤッセン