気候は何者かに操られていた。
真冬の北の大地に吹く海風は、突き刺すように冷たくて、多くの者達は貝のように口を閉ざした。
「私は貝になりたい」
貝になった人々は次々と死に、
その死体の山が幾重にも層をなして貝塚となったものが、後の世に発見されて社会の教科書にまで載ったことで、彼女は学ぶことができた。
彼女は人々をだまさねば救えないと考えた。
大きな蛤をいくつも煮詰めて、その吐息を集めたガスで、皆に束の間の幻を見せた。
やがて貝殻は開いて蝶になり、彼女の周りをひらひらと舞った。
その些細な蝶の羽の動きが、周り巡って気候を変えた。
真冬の大地に春がやってきた。
「蝶のように、マイベイビー」
繰り返し。
ところで彼女には師匠との約束があった。
二十年後のその日に、もし空が晴れていればまた会おうと師匠は言い残した。
彼女は二十年後のその日の天気を事前に知りたかった。
気象予報士達は必死で“姫”の思いに答えようとしていた…
キャスト
仁藤萌乃/富岡晃一郎(ベッド&メイキングス)/小林けんいち(動物電気)/谷川清美/八嶋智人/松村武/吉田晋一/亀岡孝洋/長谷部洋子/未来/田原靖子/大倉杏菜/元尾裕介/渡邊礼/菊川耕太郎/福久聡吾/栄治郎/柳瀬芽美/スガ・オロペサ・チヅル/柿崎智巳/梶野春菜/清水芳成/丸山雄也/三科喜代
スタッフ
作・演出:松村武/美術:中根聡子/音楽:土屋玲子/照明:林之弘(六工房)/音響:山下菜美(mintAvenue inc.)・中島有城/衣裳:勅使川原恵美/衣裳進行:和泉みか/演出助手:芹井祐文/演出補:藤條学/宣伝美術:山下浩介/宣伝写真:宮木和佳子/宣伝ヘアメイク:佐藤千晴(SUGAR)/WEB製作:長谷川達之(サージネット)/票券:佐藤恭子/制作:水流あかね/後援:杉並区/提携:NPO法人劇場創造ネットワーク・座・高円寺/企画・製作:カムカムミニキーナ/※一部スタッフに変更があります。