入院患者23号の話によれば、彼はかつて穂高登山の途中、河童の国に迷い込み、生活した。そこは人間社会では考えられない習慣と通念に満ちた国であった。出産時、胎児はその世界に産まれたいかどうかを問われ、拒否すれば中絶が施される。新機械の発明による職工解雇が問題化するが、自由主義者ゲエルは『屠殺法』により、ガスで安楽死させた河童の肉を食用にすればいいと考える。唖然とする23号に「人間界でも貧困層の女性は売春をする、食用を厭うのは感傷主義」と、河童肉のサンドウィッチを差し出す。哲学者マッグは『阿呆の言葉』で河童界と人間界について分析してみせる。「我々は人間より不幸である。人間は河童ほど進化していない」。詩人のトックは自殺を果たすが交霊術により現れ人間界の自殺者との交友を語り、自分の死後の名声を気にかける。彼の作品のうち、人間界のマリア信仰を主題とする物語「奉教人の死」が上演される。人間世界に戻った主人公は、河童を人間より「清潔な存在」と懐かしみ、対人恐怖が激化する。
キャスト
瀬田ひろ美(劇団キンダースペース)/平野雄一郎(劇団キンダースペース)/古木杏子(劇団キンダースペース)/深町麻子(劇団キンダースペース)/森下高志(劇団キンダースペース)/榊原奈緒子(劇団キンダースペース)/高中愛美(劇団キンダースペース)/鏡淵だい(劇団キンダースペース)/淡路絵美(劇団キンダースペース)/林修司(劇団キンダースペース)/阿部百合子(劇団俳優座)/牧口元美(LOTSTAFFS)/紺野相龍(ざぶとん役者の会)/白州本樹(フリー)/荒牧大道(フリー)
スタッフ
原作:芥川龍之介/構成・脚本・演出:原田一樹/美術:松野潤/音楽:和田啓(オフィス・ティルタ)/照明:篠木一吉(創光房)/音響:浦崎貴(ワンダースリー)/衣裳:鳥居照子/小道具:高津映画装飾(株)/舞台写真:中川忠満/チラシ絵・題字:山本洋三/舞台監督:村信保(劇団キンダースペース)/チラシデザイン:古木杏子(劇団キンダースペース)/制作:小林もと果・白沢靖子・坂上朋彦・三枝竜・大桑茜・中村智也・西川ゆき依・藤川千尋(劇団キンダースペース)/協力:ささきやよい(サーティーズ)、劇団俳優座、LOTSTAFFS、ざぶとん役者の会、スターダス・21、(株)プロダクション・エース、キンダースペース賛助会・友の会、キンダースペースワークユニット2016/提携:シアターX