Genre
Company troupe of no name
Period 2019/01/17
Region Kinki
Cast
泉侃生/島原夏海/太田雄介/中谷有希/木本牙狼
Staff
制作:山本直子
Outline
私には父がおらず、母が遅くまで働きに出ていたため、4歳から祖母に育てられた。幼少期の私はとにかく気弱で、誰とも話さず人の後ろに隠れる「かたつむり」の様な子どもだった。祖母は「あんたはあかんたれや」「あんたのことを、みんな陰で笑ってる」と繰り返し、トップを取れと教えた。そして決まって最後には、「あんたが憎いんちゃうで。あんたのために今厳しく言うてるんやからな」と言った。
祖母は確かに私を愛していた。そして自分の愛する孫は、何をするにも一番じゃなければならないという祖母の強い思いがあったのだ。そんな祖母の期待に応えるべく、小学生の私は優等生を目指した。しかし上には上がいる。どんなに頑張ったって勝てないこともあるが、そんなことは許されない。私はただ、祖母の機嫌を損ねたくない一心で20年間生きた。
そんな祖母だが、機嫌が良い時もあった。そんな時、祖母は「あんた、りんご食べるか?」と私に聞き、りんごを剥いてくれる。これが最大級に機嫌がいい時の合図だ。だがそんなことは年に数回、ほとんど毎日機嫌が悪い。「よくやったね」と、褒められた覚えはなく、反省文の数ばかりが増えていった。
ある日、祖母の虫の居所が悪く、夕食の支度をしていた私に、何故か突然もやしの袋を投げつけてきた。全く意味が分からない。そんな些細なことで私のダムは決壊し、心底嫌気がさして、雨の中傘も差さずに飛び出し線路沿いをただただ歩いたことがある。17の冬だった。この人がいなかったらどんなに幸せだっただろう。
「早よ死んでくれへんかな、死んでくれ。お願いやから死んでくれ」とブツブツ祈る。その度に幼少期の気弱な私がささやくのだ。「悪いんはおばあちゃんではなく、うちや」と。この気弱な私が自責の念を煽るので、私は祖母を殺さずにすんだ。そうでなければ私は確実に殺めていたと思う瞬間があった。
耐えに耐えて、ごめんなさい、ごめんなさい、私が悪いと祖母に謝り続けた。そんな日々から、24の夏、ついに解放されたのだ。
出棺直前、祖母の棺に遺品を入れていく。祖母の眼鏡、よく身に着けていたストール、祖母の部屋の引き出しに入っていた私が幼稚園の時に描いた祖母の似顔絵、そして私の反省文。「ようこんなもん取ってたな」と、半ば乱雑に祖母の棺に入れようとして、ふと目をやった反省文の裏側。祖母の字で「おばあちゃんもごめんね」と、小さく書かれていた。
「謝ったことなんか一回もなかったくせに、今更何やねん!」。私はその手紙を破りすてようとしたが、結局破ることが出来なかった。
私はそれから、祖母が台所で嬉しそうにりんごを剥いている姿を夢に見るようになる。頻繁に、頻繁に夢に見る。祖母が私に何かを言おうとしているが、私はそれを聞き取ることが出来ない。いや、たぶん聞き取りたくないのだ、私は。
もしそれが、私への謝罪の言葉だったらどうする。私は祖母を許すしかないのだ。そして自分を責めるしかないのだ。この感情はどこへ向かえばいいのか。祖母を恨むことで保とうとした心の均衡が崩れてしまうではないか。
祖母が亡くなって5年が経った。私は未だに、祖母の呪縛から逃れられない。いないはずの祖母の顔色を気にして、私は今日を生きている。
私は祖母の全てを、未だに愛のムチとして片付けることは出来ない。頭では理解していても、納得することが出来ない。しかし私はいつか、この20年間が「愛」であったと、私と祖母の間には、ただ愛しかなかったのだと納得したい。でないと、私は自身が産まれて来たことを、私の内に存在する気弱な幼少期の私を、生涯許すことが出来ない。
そしてその「私自身を許すこと」は、「祖母を許すこと」で実現しうるのだと思う。
私は、私の陰鬱な記憶を演劇という形を使って笑い飛ばし、自分を許してやりたい。そして同時に、これが同じような経験を持つ人達の心に届けと願う。
渦中にいれば笑えないが、一つ客観視してみたら、一連の出来事を「愛に溢れた話」として昇華させることができるかもしれないから。
「愛」とは如何に厄介で、そして罪深いものだろう。しかし人は、誰かを愛さずにはいられない。人が人を愛する限り、私が今回描き出す物語は普遍的だ。
誰にとっても経験したことのある感情や、現実に起こりうるすれ違いの応酬。「共感できる作品」で、私は自分以外にも、同じような経験を持つ見知らぬ誰かの心を少しでも救いたい。
平均: (0)
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