*あらすじ
「誰にでも、(当人も気がついていないかもしれませんが)語るに足るエピソードの一つか二つはあるものです。そして、そのエピソードの中に、その人らしさを発見することもあれば、全くその人らしくないその人の姿を発見することもあるでしょう。
いずれにしてもそれは、その人の人生の断片の、その鮮やかな裂け目に映った、その人のポートレートなのです。
「ドロップ」は、フランツ・カフカの、ある有名なエピソードをモチーフにしています。
人形を失くして悲しみに暮れる幼い少女をたまたま見かけたカフカが、その人形からの手紙を創作し、何週間もかけて少女に読んで聞かせたという、あのエピソードです。勿論これは彼の手によって残されたものではなく、彼の死後、恋人だった女性が、在りし日のカフカを偲んで書いたものの中で見つけられたものです。
「彼は創作するときと全く同じ態度で少女と向き合っていた」とも彼女は言っています。
このエピソードを読んだのはかれこれ十年以上前になりますが、もう四十になろうとしている私の姿と、件の少女の姿が重なったことを昨日のことのように思い出します。私はカフカの本を手にする少女そのものでした。その少女の未来を想像することは、私が生きる希望を抱くことと同義だったのです。
今、世界は大きく変容しています。誰もが、その優しい声の響きをこもらせ、その美しい表情の半分を隠して生きています。
演劇は「三密」と言われていますが、「秘密」と「親密」と「濃密」と「緊密」と「内密」を加えれば、「蜂蜜」です。
そんな希望を込めて、ツツガムシはこの時期に、ずっと芝居を作り続けてきた新宿の小さな劇場で「ドロップ」を公演します。
皆様と共に、この公演を成功させることが出来たら、これほど嬉しいことはありません。」
*作:日向十三
*演出:田中壮太郎
*キャスト名
浜田晃、堺小春、本多新也、吉野容臣、大沼百合子
*スタッフ
照明:鷲崎淳一郎、音響:藤平美保子、衣裳:吉原顕乃、絵:林千絵
*問い合わせ先メールアドレス:engekitutuga64@gmail.com
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