第4回(1997年)大賞:岩崎正裕
ここからは遠い国
作品情報
【劇団】
劇団太陽族(199Q太陽族:受賞当時)
【出演】
作・演出:岩崎正裕/美術:今井弘/照明:徳田芳美(有限会社アート・オー)/音響効果:金子進一(音響素描):舞台監督:池田ともゆき・鈴木田竜二/宣伝美術:下東英夫【1997年当時】
収録:シアターテレビジョン
【スタッフ】
工藤俊作/森本研典/奇異保(虚航船団パラメトリックオーケストラ)/南勝(俳優詩房)/高木稟(転球劇場)/岸部孝子/北山あき/篠原裕紀子/上宇都理恵/藤堂麻里/北岡啓孝/佐藤めぐみ/金田典子【1997年当時】
【あらすじ】
1995年に地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教の信徒達の心理に目を向け、20世紀末の日本に漂う不安感を描いた作品。
オウム真理教の信徒であるヨシマサと兼光(かねみつ)は任務を遂行するために車で走っている途中、山中でエンストしてしまう。濃い霧に包まれていくなか、車の荷台に突如、ヨシマサの母、智子があらわれ「おかえり」と語りかける。夢か現実か分からないままヨシマサは眠りに落ちていく。
それからしばらくの後、大阪近郊で工務店を営むヨシマサの実家のガレージに軽トラックが一台置かれたままになっている。その中で寝起きしているヨシマサのことを、父、仁(ひとし)をはじめとして、信子、礼子、真理の三姉妹は心配している。母、智子は既に亡くなっているが、時々意識が混濁するヨシマサらの前に姿を現わす。ヨシマサは、社会の歯車として働いて家族と暮らす生活に全く意味を見いだせず、宗教は世の中を変えることが出来ると信じた日々との葛藤の中にいる。彼をスパイとして利用しよういう思惑で近づく公安警察の小松。ヨシマサは兼光を匿いながらも、何を拠り所とするか、どこへ行けばいいのか迷うしかないのだった。ヨシマサの苦悩は、学生演劇をやっている妹、真理の友人から借りた「ハムレット」の台詞から、次第に「三人姉妹」のアンドレイの台詞へと重なっていく。
初演は1996年、当時の劇団名は199Q太陽族。(映像は1997年3月1日グローブ座での再演)