第8回(2001年)大賞:樋口美友喜
ひとよ一夜に18片
作品解説
17歳の引きこもり少女・日世子の部屋を、同級生の少年・時野が訪ねると、そこは空っぽの工事現場。前夜、日世子は自分の足元の”根“から現れた「花嫁」によって、部屋ごと何処かへ消え去っていた。日世子を探す時野は、地中にからみあう人間の”根“の声を聞こうと「根学」を追究する教授と女子大生たちに出あう。そこで彼らが聞いたのは、日世子とネット授業で繋がった少年・忍の”根“である「刃」の声だった。日世子に自ら”根“を断ち切らせようとする「刃」から守ろうと、たどり着いた時野は彼女をただ抱きしめ、うずくまる。日世子の「花嫁」は空へと昇ってゆく。奔放な想像力で映しとる、網状にからめとられたいまの若者の苦しみと救済。(村上知彦)