第7回(2000年)大賞:樋口美友喜
深流波−シンリュウハ−
作品解説
奇跡の記憶少年“と呼ばれ、喝采を浴びたものの、今はうだつの上がらない大人になった男が、再び注目を集めるため”奇跡“を起こすイベントを企画する。そこに、何かを見た瞬間記憶を喪失し、子供に逆行する女性が絡む。彼女は何を見たらそうなるかが不明のため、いつも目隠しをしている。ほかに、愛おしいと思うと、相手が生き物でも潰れるまで抱きしめてしまう癖があるため、カメラを持ち歩き、写真を握り潰す”カイブツ“と呼ばれる少年、頭蓋骨の裏側に過去の経験が鮮明に再生される女性などが絡む。人の目を見て話せない男性、現実を見ると拒否するしかない女性など、現代、あるいは未来の若者を象徴するような”新人類“が活写された。 (九鬼葉子)