第6回(1999年)大賞:土田英生
その鉄塔に男たちはいるという
作品解説
他国の戦争に、日本が参戦した。戦場の森の中に建つ、鉄塔中腹の櫓には、駐屯地から逃亡した慰問団”コミックメン“の男4人と兵士一人が潜んでいた。1週間後のゲリラ一掃作戦で終戦になるという噂を頼りに過ごす日々。むやみにルールを作り、集団の秩序を守ろうとする者と、こんな時だからこそ自由な気分でショーの稽古をしたい者とが言い争う。兵士は彼らの対立に、駐屯地と同じ殺伐とした臭いを嗅ぎ取る。鉄塔中腹という、不安定で曖昧な場所を舞台に、身近な対立構造と戦争を重ね、不確実な現代日本社会を活写。ゲリラ一掃作戦後、殺人の感覚が麻痺した日本人兵士達が、彼等に笑いながら銃を向けるラストは衝撃的。(九鬼葉子)