第13回(2006年)大賞:竹内佑
サブウェイ
作品解説
舞台上に配された何枚かの障子が開くと、そこは遊園地。自転車に二人乗りでやって来たのは、「従兄弟のおにいちゃん」を探す少女と「おとうさん」を探す少年だ。障子の開閉によって、場面は、ジェットコースターの事故現場、パソコンのある部屋、妄想の砂の城などへとめまぐるしく転換。父に性的虐待を受ける少女や、息子を殺した父親の話など、悲惨な家族の物語が、音楽、ダンス、ラップを盛り込んだ演出の中で交錯する。冒頭の二人も実は、現代の病理をその身に背負って死んだ者たちであり、遊園地で過ごした「楽しい時間」を取り戻そうと切なく願っていたのだった。音速で回るコマのような、圧倒的なスピード感が鮮烈な印象を残す。(畑律江)