第12回(2005年)大賞:水沼健
壁ノ花団
作品解説
1985年、東京のはずれにある古い一軒家に同じ会社に勤める4人の女が共同生活している。物語は、女たちの一人の死体が床に転がっている場面から始まる。その事故死に至るまでの過程が、時間をさかのぼりつつ描かれていく。原付バイクに貼られた「壁ノ花団」のステッカー。それは女の一人がかつて結成していた”秘密結社“だという。鍵を失くしたタンスの抽き出しをこじ開けて出て来たノートには、野球観戦や海水浴など、他愛のないその「活動記録」が記されていた。舞台はつねに雨音のなかで進行し、お茶やレコード、テレビのニュースや料理をめぐる、女たちのなにげない日常会話の中に、死をめぐる不穏な象徴がちりばめられる。(村上知彦)