第15回(2008年)佳作:棚瀬美幸
ななし
作品情報
【劇団】
南船北馬一団
【出演】
藤岡悠芙子、片桐慎和子、金明玉、真野絵里、中野聡、上瀧昇一朗(空晴)
【スタッフ】
作・演出:棚瀬美幸 舞台美術:柴田隆弘 照明:湯頭真智子 音響:大西博樹 舞台監督:菅本城支 チラシイラスト・デザイン:米澤知子 製作:南船北馬一団
【あらすじ】
問いかけはいつも所属を求める。
「おまえは、いつ、どこで、だれと、どうしたんだ。」
これに答える 正解不正解
あれに答えない 説明放棄関係崩壊
それに答えられない 無言沈黙視線疑問
一人の男と二人の女による、2つのエピソード。両エピソードとも舞台は電車の中。
どこの国を走っている電車なのかは、明かにされません。この二つの電車は、同じ線路の逆向きを走っています。
片方の電車の3人組は、「何かを捨てるため」の旅。すなわち、過去から現在へと向っていきます。
もう一方の3人組は、「何かを探すため」、すなわち、現在から未来へと向っていきます。
孤独から愛するフリをし、それが相手への優しさだと考えてきた男。
変色した林檎のようなセピア色の日常から抜け出した男。
「いってきます。」の言葉を最後に帰ってこなくなった男の真意を知りたい女。
輪郭だけになった思い出のトラウマから逃げたい女。
乗客たちの求める想いが、電車を先へと進める原動力となります。
しかし、その先は、“現在”であり、もう片側の先は“過去=未来”です。
逆車線の電車の中にいる人物は、時間と空間がパラレルした世界に存在するもう一人の自分です。
そのため、物語は登場人物の想いによって、二重、三重に重なり合っていきます。
しかし、展開はしていきません。ある一つの出来事と、それを見つめる人がいるだけです。