第8回(2001年)佳作:山岡徳貴子
祭りの兆し
作品解説
かつて宗教団体が集団自殺した古い一軒家で暮らす若者達。彼等はその時生き残った信者の子供達だ。それぞれ施設で育つが、外界になじめず、またここに集まっていた。そこに公安の若い刑事が現れる。彼等は信仰を同じくする者達の小さな団体だと平静を装うが、実は集団自殺を計画していた。
他によりどころがなく、肩を寄せ合い、疑似家族として生きるしかなかった若者達。近親相姦するしかなかった兄妹。一緒に生きるのではなく、一緒に死ぬことしか選べなかった者達の閉塞感と心の空洞が、不気味なユーモアを湛えながら描かれた。ニッパーで首を刺し、自殺した妹が、首に赤い布を巻いて行進する場面は、戦慄的。(九鬼葉子)