第16回(2009年)佳作:土橋淳志
裏山の犬にでも喰われろ
作品解説
現代に生きる魔女の姉妹、友佳里と恵は、公園で師匠の魔女を殺した三人のヤクザのことが許せない。場面は、その後のヤクザ一味の暮らしや、劇団の解散を決めて拠点だったアパートの部屋を片付ける劇団代表と元の演劇仲間たちの話、戯曲ワークショップの講師と生徒のやりとりなどへと展開していく。一見、何の脈絡もなさそうなエピソード。それらが「演劇」をキーワードに、多重の入れ子構造となって進展し、絡み合う。その底には、異端や穢れとして排除されてきた魔女とは、自由で多義的な生き方を体現する存在だったのではないかという視点も隠されている。何とも手の込んだ巧妙な構成は「ルービックキューブ」「合わせ鏡」にたとえられた。(畑律江)