第12回(2005年)佳作:司辻有香
愛と悪魔
作品解説
高校生の男女3人が、若い女性教師を教室に監禁している。その4日間の物語。過呼吸に苦しみながらも、監禁された教師・松田はなぜか逃げ出そうとはしない。教師のストッキングの伝線を指摘する仁美は、寒がる教師に布団やアンカを与え、抱きしめ合うように添い寝する。好きだった祖母の葬儀に行こうともせず、聖子とのセックスにふける横山。堕胎手術から戻り、教師の布団にもぐって寝てしまう聖子。暴力的に振る舞いつつ、そこは彼らにとって唯一安らげる避難所のようでもある。4日目、何ごともなかったように教師から家庭科の授業を受け、伝線したストッキングを縫い繕う仁美。教室の窓が、教師自身の手でマジックで黒く塗りつぶされてゆく。(村上知彦)