第1回(1994年)佳作:岩崎正裕
レ・ボリューション
作品解説
猥雑な裏町に構えられた村中新聞店のまだ閉じたシャッターの前にうずくまっているリリという少女の隣には、ゴロなる犬が控えているのだが、理由も説明されぬままこのゴロが人語を話すあたりですでにこの戯曲は怪しい。やがて店員のリョウタ、バンド仲間のサッコやユリ、スナックのママ・ユキエらが入れ替わりあらわれ、朝刊配達の慌ただしい風景をさんざめかすのだが、酔いつぶれていた店主が目を覚ますと、死んだはずの前の店主がのり憑ったような多重人格を呈す。その前店主の不審死を調査する作家の野呂の口からレボリューションなるドラッグの名が出る頃、誰もが奇怪な幻覚に犯されてゆく。だが、世界の変容のほうが真実に見えてくるまま不気味に幕は下りる。(岡野宏文)