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商品コード: 30221602
The end of company ジエン社『物の所有を学ぶ庭』台本
販売価格(税込): 800
2018年2月作品 ※この商品はメール便対象商品です(3点以内)
人数:男4人 女4人 上演時間約90分
■商品説明
作:山本健介
演出:山本健介

あなたは私の、ものなのですか。ものは私の、あなたなのですか。私のものは、だれかなのですか

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私達は彼らを「妖精さん」と呼んでいるのだけれど、それは正式名称ではなくて。

妖精さんはある時から、一人、また一人と、この世界に、この国に出現し始めた。今、この庭に仮住まいしている妖精さんは二体で、男女で、二人は兄妹らしい。詳しい事はよくわからない。でも、このまま妖精さんがこの街に住むのは、きっと難しいのではないかなと思う。
妖精さんは我々とコミュニケーションは取れるし、頭だっていい。きっと私たちの言っている事は伝わっている。意味としても言葉としても。でもそれでも、妖精さんたちは「所有」という事が、やっぱりわからないみたいで、万引きだったり、無断で人の物を持ち帰ってしまったり、冷蔵庫の中のおやつをパクパク食べたりしてしまう。
だから私は高校教師だった時の事を思い出しながら一つ一つ、まずは「所有」について、妖精さんたちに教えている。
「名前が書いてあれば」と男の妖精さんは言った。

「分かります。物に、名前がついているという事は、触ってはいけないという事が。なぜ触ってはいけないのかまでは、実はわかりません。すみません。でも、そういう文化なのだといわれたら、それは、そうか、私たちにとっては、聖域にある石と同じような存在なのでしょう。名前が書いてある物に関しては、わかりました、私たちは触らないようにします」

私は、触ってもいいんじゃないか、とは思った。名前が書いてある他人の持ち物に、触ることそのものが悪いのではない。他人の所有物を、尊重しないというか、尊重? 所有とは、尊重のことだろうか? たとえば今私が彼の着ている服を、同意なく脱がせて、奪い取って、持ち帰るのはおかしなことだ。いけない事だ。でも、彼の服に、からだに、私の手が触れる事、それは、そんなにいけない事なのだろうか。

「ハリツメさんには、名前が書かれていない場合の、“物の所有”の見分け方を教えてほしいのです。距離の要素が大きい事は、わかりました。手にしている、身につけている、というものほど、それは“所有”されているのだ、と。でも、時に手を離れて、距離が遠くなっているものも、“所有”されている、ということが、分かりません。物が身体から遠くなったら、それは所有ではないものではないのですか?」

そして妖精さんの彼は、私の体を触る。私は、嫌だ、と言わなくてはいけない。妖精さんは悪気なく、敬愛を込めて私の顔や、肩や、胸を触る。

「あなたには名前が書かれていない。あなたは、触ってはいけない、と言う。名前が書かれていないのに、触ってはいけないのは、なぜですか。」

触られながら私は、なぜだろう、なぜかしら、と考える。どう、教えたらいいだろう。
私の体は、私の物だという事。社会的には、もうあの人の物だという事。お嫁にもらわれた、ということ。もらわれた、という私は、物なのか。人ではないのか。人は、物なのか。あの人の物になって、他の誰にも触られてはいけない私が、いまこうして髪を触られている事は、どうしてよくない事なのか。私はそんな事、教えてもらわなかった。学んでこなかった。教えてほしい。知りたい、学びたい。

私は教師だったのに、何でこんなにわからないんだろう。
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